2013年12月。インバーミアに配属された僕は約3ヶ月過ごしたバンフを離れ、インバーミアに移動。インバーミアでは街中とスキー場を結ぶシャトルバスの運転手として働くことになっていました。
前回の記事
シャトルバスのリアルな業務内容
運転だけが仕事ではない。拘束時間が長いというカラクリ
今回配属されたインバーミアでの仕事は、インバーミアの街中とパノラマと呼ばれるスキーリゾートを結ぶシャトルバス。1往復約1時間。1日8往復。日給100ドル。時給換算で12.5ドル。
実際には運転前にエンジンをあたためないといけません。エンジンをかけた状態で1時間くらい放置。その間に各オイルをチェックしたりなんかで、結局運転前に1時間くらいの作業がありました。仕事後には社内の掃除、洗車、ガソリンの補充、各種点検など雑務も多いですね。
また、8往復ぶっ通しで運転するわけではありません。3人でシャトルを回していて、1人オフで2人が働くといった感じ。忙しい時間帯は2台出して、それ以外は1台。なんだかんだ拘束時間は軽く12時間は超えてましたね。時給換算すると7ドルくらいだったはず。
路面はスケートリンク。だってカナダの冬だから
カナダの冬って寒いです。特に、ここはロッキー山脈の山々に囲まれたエリア。標高も高いです。こんな場所でシャトルの運行をしていたんですね。道はいろは坂のようなくねくねした細い道。そんなところで23人乗りのバスで運行していました。
実際には定員の2倍を乗せていた(法律違反)
僕が運転していたバスは23人乗り。だけど、忙しいときには40〜50人乗せた日もよくあったんですね。これの何がいけないかというと、僕が持ってるライセンス(Class4)が24人までしか乗せることのできないものなんですね。要するに法律違反。※過去の記事に23人って書いてたんですけど、ネットで調べたら24人でした。
社長は「定員以上は乗せるなよ〜」なんて言っても実際に現場ではみんな次々に乗ってきます。だって1時間に1本しかないですからね。みんな必死ですよ。バスの中は満員電車並みの密度。
現場に社長が来たときですら、「もう行っちゃっていいよ」なんて言うわけです。そして、警察に捕まった時の罰金は自己負担。
スキー場の方と連携をとってスタッフを配置して人数管理をさせるとかいくらでも方法はあったはずで、こういうのが社長の仕事なんじゃないの?って当時は思ってましたね。
そして、これだけ人を乗せてたら当然車に負担がかかるわけですよ。そして、見事にネジがイカれてタイヤが外れかけました。
お客さんが乗ってるタイミングでタイヤが外れたら確実に死亡事故ですからね?こればかりはゾッとしました。
バスの運行で時間を守るのは非常に難しい理由
お客さんの乗り降りにかかる時間は予測できない
バス停に停まってドアを開けたらスムーズにお客さんが乗り降りしてくれる。現実はそんな思い通りにはいきません。停留所まで走ってくる人を待つか無視するか。というのもありますけど、このシャトルバスの運行で一番予測のつかないことはスキー・スノーボードなどの道具の出し入れでした。
日本人みたいに律儀に揃えてくれるわけじゃないんですよ。本当にテキトーに積み上げていくので、とあるバス停で1人降りようとした時にその人の道具が一番下にある場合とか最悪ですよね。
「お前が道具揃えればいいじゃん?」なんて指摘もあるだろうけど、僕が道具を置くそばからガンガン勝手に道具をバスに放り込んでいくんですよ。みんな自分のバスの座席を確保したいので。
そして、バスに戻ると軽く24人オーバー。過剰積載ですよ。この悪循環。
「定員オーバーなので降りてください」なんて言っても降りるわけがないんですよ。自分からバスを降りて1時間後のバスを待とうなんて人いません。それに、僕が道具を積み込んでる間にどんどん勝手にバスに乗り込んでくるので、乗った順番とかも把握できません。もしできるなら後に乗った人を名指しして「降りてください」ってできるんですけどね。
「んじゃバスのドア閉めときゃいいじゃん」っていう人もいるでしょう。そうすると、道具を預けたのにバスに乗れない人とか出てくるんですよ。
こんな感じの悪循環があるので、乗り降りにかかる時間は予測できません。
路面状況が悪いので、慎重に運転せざるをえない
スケートリンクの上を23人乗りのバスで40〜50人乗せて運行する。慣れたら何にも感じなくなるんですけど、最初の方は本当に怖いです。事故でもしたら大惨事ですからね。
先輩はナルシストの人が多かったので「余裕だよ!」なんて言ってましたけど、こういうバカが調子に乗って事故を起こすんですよ。タイムトライアルとかやってましたからね。ただのクズですよ。
バスの運転手には感謝の気持ちを伝えましょう
シャトルバスを運転していて思ったことはやっぱりストレスが溜まります。こちらとしては守らないといけないことがあってお客さんに伝えているのに、それに対してキレられたり相手にされなかったりするんですよ。
最終便のときなんか、公道なので停まってはいけないポイント(リゾートのスタッフ寮の正面)でお客さん通しで手をつないで道路を封鎖するんですよね。こちらとしては轢き殺すわけにはいかないので停まります。そして、路面が凍ってるので急ブレーキをせざるをえない。最終便なんで当然夜ですよ。外は真っ暗。本当に危険なんですよ。
そして、停まってしまうと次から同じ方法を使われるんですよね。「この方法だと停まってくれる」って学習するので。
これはほんの一例ですけど、運転手の方って色々と気を使うことが多いのでストレスが溜まってるはずです。
運転手の言うことにはきちんと従って、降りるときには「ありがとう!」の一言くらいあると、運転手側としても仕事しやすいですよね。
皆さんもバスに乗るときは運転手の方に敬意を示しましょう。特に団体貸切の場合。仲間内で貸し切ってると、調子に乗ってバスの中でふざけてはしゃいだりしますよね?そんな時に、運転手の方の立場になってみてください。自ずとどう振る舞うべきかわかるはずです。